移動平均線は最も基本的なテクニカル指標です。今回は詳細なバックテストから移動平均線の有効性を調べます。まずは、移動平均線の例を見てみましょう。
このチャートは、1週間分のユーロドルの値動きになります。青の線は1分足の始値で、オレンジと緑の線が単純移動平均線です。期間の単純移動平均線は現時刻から前の時刻分の平均を表します。オレンジと緑の移動平均線はとです。平均を取る期間が小さいほど、価格変動に敏感に追従します。そのため、短期間移動平均線が長期間移動平均線を上回る場合は上昇トレンド、その逆の場合は下降トレンドにあると見なします。移動平均線に基づく取引では、2本の移動平均線の交差点で、トレンド転換に従って売買を繰り返します。上のチャートを見ると、何となく上手くいく気がしてきます。果たして、移動平均線だけで本当に勝てるのでしょうか。以下ではこれを検証してみます。
移動平均線の種類
移動平均線とは値動きを平滑化したものです。平滑化の方法はいくつもありますが、ここでは代表的な3種類の移動平均線を使います。これらはMeta Trader 4&5に組み込まれている指標です。値動きから移動平均線の求め方を載せておきます。
・単純移動平均線(SMA)
単純に、直近の時刻での平均です。パラメータはです。
・指数移動平均線(EMA)
時刻前の価格にの重みを乗じて平均することに対応し、過去の価格の影響が指数的に小さくなります。パラメータはでです。平滑移動平均はとしたものであり、基本的に指数移動平均線と平滑移動平均は同等です。
・(線形)加重移動平均(WMA)
時刻前の価格にの重みを乗じて平均します。過去の価格の重みは線形に小さくなります。パラメータはです。
データ
ユーロドル(EURUSD)の1分足を、HistData.comからダウンロードしました。期間は2010年1月4日から2020年8月8日の10.6年分になります。移動平均線には1分足の始値を使いました。C終値を使う場合も結果はほとんど変わりません。(終値を使うことが多いですが、EAの自動取引ではTickベースなので、始値の方がより近い取引が可能です。)土日をまたいで価格が飛ぶので、移動平均線は各週ごとに求め、ポジションは金曜日の終値で閉じることにします。また、スプレッドは0とします。
バックテスト結果
以下の図に、各移動平均線でのバックテストの結果を示します。上から、単純移動平均線(SMA)、指数移動平均線(EMA)、加重移動平均線(WMA)になります。色は、1取引当たりの損益をpipsで表したもので、青が益で赤が損になります。
トレンドフォローの領域(あるいは、)のところでは、収支がプラスであるところが多く、移動平均線による指標が有益である可能性はありそうです。特に、指数移動平均線は広範囲なパラメータで収益がプラスになっています。単純移動平均線での最適パラメータはで、全部で1433取引で5676pipsの収益になります。指数移動平均線での最適パラメータはで、1取引当たり6.4pipsになります。この値は3種類の移動平均線の最高値ですが、取引数が少なく、476取引で3065pipsの収益になります。最後の加重移動平均線はパラメータ依存性が最も明白です。最適パラメータはで、1555取引で6651pipsの益になっています。
次に、各移動平均線での最適パラメータにおいて、1取引あたりの損益のヒストグラムを示します。加重移動平均のヒストグラムが、最も収束が良さそうに見えますが、いずれのヒストグラムも傾向が似ています。ピーク値はマイナスであり、数10pipsの範囲では損の頻度が多くなっています。しかし、プラス側は袖が緩やかで、大きな益が乗ることが多く、平均値がプラスになっています。つまり、騙しが多いものの、勝つときは大きく勝てる傾向のようです。
まとめ
移動平均線だけを用いての売買でも、パラメータをそこそこ調整することで勝つことは出来そうです。いづれの移動平均線においても、スプレッド(1pip)を考慮に入れて、1年当たり数100pipsは平均で勝てるようです。最も安定と思われるのは加重移動平均線であり、1年当たり約150回の取引で約500pips勝っています。
以上のように、移動平均線による売買の有用性はありそうですが、週に3回程度の低頻度取引です。このため、高確率で益が乗ってくるには数年の期間が必要です。今後、他の手法と組み合わせて、更に安定に収益を伸ばせる手法を探ってみます。
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