ドル円の分布ではレート自体がどの値を取り易いかを見ました。ここでは、レートの差分の分布を調べてみます。ここでの「レートの差分」とは一定時間間隔でのレート変化のことで、ローソク足の実体部分(ローソク足のヒゲを除いた部分)の長さを指します。まず、この差分の大きさの平均値を様々な時間足(ローソク足)で見てみましょう。次の図は、差分長さの平均値の時間間隔依存性を示しています。例えば、日足(1440分足)では平均長さが約45銭(pip)です。1日毎に方向を予測して、全て的中したときに、平均として45(pip/日)程取れることになります。(は横軸座標)に比例したグラフをオレンジ線で表示します。差分の平均長さはの変化に良く似ています。特に、短い時間足では両者の変化はほとんど一致してます。これは、統計学で言う再生性という性質に関連しています。例えば、レート変化が確率的ボラティリティモデルに完全に従うと、正規分布の再生性から差分の平均長さはに比例することになります。長めの時間足で、2つのグラフが離れていることから、確率的ボラティリティモデルは完璧なモデルでは無さそうです。
平均値だけではなく、今度は差分長さの分布を調べます。10分、1時間、1日の3つの時間足でのヒストグラムを次の図に示します。時間足が大きいほど、袖の広い平らな分布になります。これは、時間が経つ程、レートが離れたところに位置し易いという感覚から納得出来ます。
次に、このヒストグラムの横軸の尺度を、時間足に応じて変換します。変換の仕方は、横軸にをかけます。は時間足のことで、1分足、1時間足、1日足はそれぞれになります。この横軸の返還を施すと、それぞれのヒストグラムはよく似た形であることが分かります。特に、短い時間足の2つの分布はほとんど重なって見えます。同じ分布からデータが生成されるという再生性を良く表した結果になっています。一方、1日足の分布は少しズレが顕著になっていて、より袖の広い分布へ変化してそうです。
仮に為替レートが確率的ボラティリティモデルで表せるとすると、どんなに秀逸な予測を行ったところで得られる損益の期待値は0です。手数料やスプレッド分だけ負けてしまいます。為替レートの生成過程の詳細は不明ですが、今回の観測からの個人的な感覚として、短時間(1時間以下程度)先の予測は殆ど不可能であろうと考えます。
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